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タイトル50音順リスト
著者別リスト

少女マンガ読書メモ(1997年6月)


希林館通り 1・2(1997.6.1)
ハッピー・マニア 2(1997.6.1)
ハッピー・マニア 3(1997.6.1)
クール・ガイ 1(1997.6.1)
ささやななえ自選集 1(1997.6.1)
お伽話がきこえる 3(1997.6.8)
クール・ガイ 2(1997.6.8)
クール・ガイ 3(1997.6.8)
RED DRAGON 2(1997.6.8)
幻獣の國物語 13(1997.6.14)
ジークフリート 勝利の楯(1997.6.14)
ZERO・I(1997.6.14)

希林館通り 1・2

 塩森恵子
 集英社 1997.5.21
 集英社文庫(コミック版)
(メモ)
 ベルばらファンの姉が買っていた『週刊マーガレット』を読んでいた小学生の私には、正直、この話のどこが面白いのか全然わからなかった覚えがある。けれど、どこか心にひっかかるものがあって、愛蔵版が出たときには買おうかどうしうようか、迷った挙げ句、結局買わなかったのだけれど……。文庫になったのを機会についに買ってしまった。
 で、読んでみたら……めちゃくちゃ面白いぞ! ただし、小学校高学年男子にこの面白さを分かれといってもそりゃ無理な話。自分を責めるのはやめたのであった。
 男勝りの女の子が恋に目覚める、という基本パターンを踏襲しつつも、そのパターンに回収されない四角関係の展開も見事だが、その複雑かつ微妙な人間関係の描写自体が素晴らしい。特に、それぞれのキャラクターの人と会話している時の表情と、一人になった時の表情の対比など絶妙としかいいようがない。セリフのない、表情を見せるためのコマが多いのが特徴か。この絵の密度で週刊連載していたとは! うーむ。信じられん。
 それにしても、女の子が女になっていく過程を描いていたとは、全然憶えてなかったぞ。喧嘩して押し倒したあと、冷静になって「今夜は帰りなさい」という年上の優しい男性に対して、「いくじなし……」と泣く高校生の女の子。露骨なセリフや描写はかなり注意深く避けられているが(それだけにより思わせぶりで良かったりもする)、性への目覚めを明確に一つの主題としている。こりゃ小学校高学年には荷が重いわけだ。
 こうして読んでみると、全然ストーリーを憶えていないことに呆然としてしまうなあ。私ゃ記憶力ゼロか? まあ続きが楽しみでいいけど。(1997.6.1)

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ハッピー・マニア 2

 安野モヨコ
 祥伝社 1996.8.15
 フィールコミックスGOLD
(メモ)
 なんとなーく、読みたいような気が進まないような、という感じで逡巡してたんだけど、とうとう、買って読んでみたら……なんだよ、なんだよ、面白いじゃん。
 と、思ってはみたものの、面白いと思ったのは、多分、2巻から普通の少女マンガになっちゃっているからかもしれない。そういう意味では1巻の方が過激だったかもしれん。いや、面白いのは嬉しいんだけど……ああ、複雑なキ・モ・チ……って、何書いてんだ、私は。
 要するに、タカハシの存在に救われつつある(救われきれないところが救いではあるんだけど)シゲタ、という話(最後結局やっちゃうし)なので、え、それで救われてしまうんかいな、という感じはどうしても否めない。1巻で救いの可能性をあれだけ否定したあとだけになあ。単純に楽しみつつも、どうも納得いかないのであった。
 まあ、ちゃんと落ちを付けてくれたから取り敢えずはいいか。前半の不幸に酔って「ぞくぞく」しちゃうとこも楽しいし。さて、3巻は?(1997.6.1)

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ハッピー・マニア 3

 安野モヨコ
 祥伝社 1996.12.20
 フィールコミックスGOLD
(メモ)
 で、3巻を読んでみると、タカハシが一回いなくなってくれたおかげで、シゲタの暴走が回復してるのが嬉しい。やっぱり、追いかけられるより追いかけて失敗してくれんとなあ。……という感想を持ってしまうあたり、単純にただのキャラクターものとして読んでしまっているぞ、私は。ううむ、1巻で見せてくれた可能性はなんだったんだー! ……まあ、面白いからいいんだけどさ。ちぇっ。あ、あと少女マンガ的「耐える愛」のパロディとしての意味はあるかも。
 それにしてもタカハシめ、結構美味しい思いをしおって。1巻で同情したのは間違いだったぜ。これだから私立高出の東大生は、ブツブツ……はっ、いや、別に私立高出の東大生に恨みがあるわけでは……。
 ただ、この先、タカハシを巡る三角関係みたいな話になったら、なんとなくがっかりかも。頼むから安易な救いを示して終わるのだけはやめてぇ。(1997.6.1)

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クール・ガイ 1

 片岡吉乃
 集英社 95.10.30
 マーガレット コミックス
(メモ)
 池袋の芳林堂で「いま売れてます」マークがついていたので、買ってしまった。
 いや、基本的には、冷たい人のように見える彼だけど、私にだけは分かるの、パターンなんだけど、ちょいとのんびり屋だけど、感情の変化のはっきりしている主人公の女の子の表情が、丹念に描かれていて、読んでいるとついつい感情移入してしまうのだなあ。
 相手の男の子の方は、「クール」という設定だけに表情の変化をあんまり見せないようにしてあるんだけど、その対比がなかなかよい。しかし、「好きでもない女に期待させねえよ」ときたか。くー、格好いいぞ、少年。
 ポイントになるシーンでは、セリフのないコマが急増するのが面白い。表情の変化だけで見せるたあ、やるね。全3巻らしいので、あと2冊も買うかなあ。(1997.6.1)

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ささやななえ自選集 1 かもめ――GULL/ダートムーアの少年

 ささやななえ
 講談社 1997.5.13
 KCデラックス
(メモ)
 むう、講談社め、大和和紀の次はささやななえとは! 渋い! 渋すぎるぞ!
 1970年のデビュー作「かもめ」から、1975年の「少年たち」までを収録。後半は大泉サロン時代の作品なので、その筋のファンは要チェック。萩尾望都と竹宮恵子と山田ミネコがアシスタントなんて、豪華すぎでんがな。巻末には萩尾望都との対談も収録。
 いきなりデビュー作が、ナチスによるユダヤ人虐殺ネタだったのには驚いたが、基本的には、少年たちの友情ものが中心。やたらと少年どおしが抱き合うシーンが多いのは気のせい?
 そういう話の中でも、再婚で母の愛の欠如したことによる心の傷などを、既にこの時点で主題として抱えているところが面白い。特に、この巻唯一の日本もの、「私の愛したおうむ」は、ちょっと突出している。継母との不和からフラストレーションを蓄積してしまう女の子の話なのだが、最後に可能性はほのめかしつつも、安易な救いは提示していない。巻末の対談で萩尾望都が褒めるのも道理。
 最後の「少年たち」も少年たちの友情もののようでいて、実は思春期の性の目覚めがテーマだったりする。え? そんなのありがち? いや、まあそうかもしれんけど、女の子がより大人であることを明解に示した話はこの時点ではそんなにないのではなかろうか(あったりして……)。
 ううむ。ささやななえ、奥が深そうだぞ。2巻以降もちゃんと出ることを祈ろう。(1997.6.1)

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お伽話がきこえる 3

 柳原望
 白泉社 1997.6.10
 一清&千沙姫シリーズ 6
 花とゆめCOMICS
(メモ)
 うむむ。こういうラストに持っていくとは……。と、いう感じ。
 これまで描いてきた話では、現実の重さをきちんと踏まえた上でどう戦うか、という側面があって、絵柄からして一見甘めに見えるんだけど、実はちょいと辛口なとこが魅力だったんだけど、今回はかなり大甘の結末。殿様がとんずらして終わりではいかんよ。まあ、そういう手もあるのはあるけどさ。
 読者に迎合してしまったんだろうか……。というよりキャラクターに引きずられたかな? あの姫さんでは、こうならざるをえないかも。結局、悪くいえば自分の周りしか見えないというキャラだからなあ。うーん、でもやっぱり納得いかん。この人の実力はこんなもんではないはずだー。次回作に期待しよ……って私も懲りないよな。(1997.6.8)

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クール・ガイ 2

 片岡吉乃
 集英社 1996.4.30
 マーガレット コミックス
(メモ)
 いやー、やっぱ、冷たくてひねくれた男に対しては、優しくていい奴がライバルとして登場せにゃならんわな。そして、必ずいい奴ってなあ、敗北していくのさ、る〜るる〜……はっ! いや、別にそういう過去があるわけではないぞ。念のため。
 あと、ちょっとだんだん絵が乱れてきているような気がするんだけど……。ギャグで逃げるのもいいんだけど、手を抜いてないか?
 キメのシーンでセリフなしに画面を構成して、一瞬を分割してみせる技は健在。紅葉探しのシーンで、遠近の画面でリズムを作ったとこには、結構、ぐっときてしまった。(1997.6.8)

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クール・ガイ 3

 片岡吉乃
 集英社 1996.8.29
 マーガレット コミックス
(メモ)
 と、いうわけで完結巻。やっば、のほほーんとした女の子には、ちょっときつめでハキハキした娘さんがライバルで登場せんといかんよな。そしてちょっときつめの女の子は必ず敗北していくのさ、る〜るる〜……はっ! いや、別にそういう過去があるわけではないぞ。念のため……ってくどいか。
 いや、何か、主人公のギャグ顔が異様に多くなってきてる気がするんだけど……。まあ、いいか。
 それにしても、こうやってまとめて読んでみると、一見とりえのない女の子がもてて、そのくせやたらと自意識過剰に悩み苦しむ、というパターンの変形なのだなあ。ただ、主人公の性格設定が上手いとこが違うんだな。のんき者の部分を強く打ち出すことで、悩み苦しむ部分の重さとのバランスが上手くとれるようになっている。
 読後感も心地よいし、こりゃ売れるの分かるわ。中高生の女の子たちもちゃんと見る目がある、とか書いたら怒られるか。(1997.6.8)

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RED DRAGON 2

 佐藤真理乃
 ヒット出版社 1997.6.30
(メモ)
 1巻を読んで、こりゃちょっと……と思ってここに感想書くのをやめたんだけど、もしかして、と思って2巻も買ってしまった。
 結論的には、1巻を読んだときに思ったほど、悪くはなかった。1巻に入っている外伝、過去の出会いの話は、この2巻の後に入れるべきだったね。それで印象が随分違ったと思うんだけど。編集が悪いぞ。こりゃ。
 基本的にはジュネ系の話で、財閥の跡取りのおぼっちゃまとボディガードの青年との恋愛もの。身分違いの恋に、裏切りと、道具立てはそろっている。徹底的に燃えられるか否かは、キャラクターにどれだけ感情移入できるかで決まる。
 ん? ということは、二人の過去の話を1巻に入れて、感情移入を誘うという戦略だったのかなあ。確かに、この分野であれば、その方が正しい戦略のような気もするが……むむむ。思い入れだけで成立しているだけの話に終わらせない程度には、作者の力量があるのが幸か不幸か。
 香港返還という時代背景を、どれだけ上手く使えるかが、今後の鍵、というか普通の(?)読者に勧められる作品になるかどうかの分かれ目かもしれない。さて。(1997.6.8)

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幻獣の國物語 13

 TEAM猫十字社
 宙出版 1997.7.10
 ミッシィコミックスDX
(メモ)
 間奏曲的な一冊。まあ、前の巻であそこまで盛り上がった後だから、当然そうなるよね。久々のストリクスとタイトの掛け合いが個人的には嬉しい。しかし、この期に及んでまだ伏線バリバリ張るか……。あと、後半の終わることが最初から予定されている幸福な情景というのも、なかなか味わい深いものがある。
 最初は普通の少女が事件に巻き込まれ……という形式だったものが、特別な力を持ったものの運命と責任、という方向に話が(恐らくは予定通りに)移行してきているのがお見事。ただ、「王族」の血という部分に全てが集約されてしまわないことを祈ろう。ま、そんなに間の抜けたことをするような作者だとは思えないけど。(1997.6.14)

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ジークフリート 勝利の楯

 森川久美
 角川書店 1997.6.1
 ASUKA COMICS DELUXE
(メモ)
 まじめで純粋しかも不器用な青年&遊び人だけど裏に何かを秘めている長髪の美青年&学者崩れの活動家で優しい顔して裏で何を考えているのかわからない男。
 いやー、何か、森川久美の集大成みたいな組み合わせだなあ。第一次大戦後の、あまりに過酷な戦後補償に閉塞しつつあるドイツという舞台設定が、あまりにも森川久美に似合いすぎる。『南京路』ファンは涙ものか。やはりこういう濃い(?)絵柄には、煉瓦と石畳の町並が似合う。
 陰謀、差別、暴力が渦巻く中で、ぎりぎりのところで踏みとどまろうとする意思が美しい。それが敗北に終わると分かっていても。この人は、結局、こういう地点に戻ってくるのだなあ。
 未完で終わっているのが気になるが、とりあえず、原作なしの森川久美の実力を堪能はできる。原作ものを何作かやったせいか、話作りが上手くなっいるのは気のせいか?
 今回のがミュンヘン編ということで、続くのはベルリン編、のはず。出るんだろうか……。(1997.6.1)

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ZERO・I

 やまざき貴子
 白泉社 1997.6.10
 花とゆめCOMICS
(メモ)
 やまざき貴子の『獣王星』になるか。という感じ。
 核で一度壊滅した未来の日本、とくれば当然SFってことになる。何か、SF的な設定も、ちゃんとキャラクターの動きを通して見せられると、全然違和感ないもんだねぇ。当然のことなんだけど。
 壊滅前の現代を夢見る薬という設定がお見事で、作品中の「現在」と読み手の「現在」の対比が鮮烈。未来の話でなければならない必然性がちゃんとここにある。両性具有という道具立ても、元もと男女の描き分けがそんなに顕著でない絵柄なので、極めて自然(いや、褒めてるんですよ)。
 伏線がやたらめったら張り巡らされているのに、どうやら年1冊ぐらいのペースになりそう。先は長い。ま、こういういい作品であれば、続きを1年くらい待つのはどうってことないけどね。(1997.6.1)

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