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著者別リスト

少女マンガ読書メモ(1997年5月)


決定版 辺境警備 1 月夜の銀青草(1997.5.1)
ハッピー・マニア(1997.5.10)
聖・はいぱあ警備隊 5(1997.5.10)
天使のフェロモン 1(1997.5.11)
天使のフェロモン 2(1997.5.11)
君が世界を回してる…!!(1997.5.11)
百鬼夜行抄 3(1997.5.11)
トラブル・ドッグ 3(1997.5.17)
崑崙の珠 6(1997.5.18)
はらったまきよったま 6(1997.5.18)
こどものおもちゃ 6(1997.5.18)
そりゃないぜBABY 11(1997.5.24)
オトナになる方法 10(1997.5.24)
イリュージョン・フード・マスター(1997.5.24)
朝からピカ☆ピカ 3(1997.5.25)
ありのままの君でいて(1997.5.25)
竜の結晶 3(1997.5.25)

決定版 辺境警備 1 月夜の銀青草

 紫堂恭子
 角川書店 97.5.1
 ASUKA COMICS DX
(メモ)
 ちいっ! 角川書店め! 20ページも書き下ろしがあるんじゃ、買うしかないじゃないか。ちくしょー。商売上手いぞー。
 その書き下ろしが、番外編という形ではなく、本編の中に組み込まれてしまっているというのがすごい。つまり、小学館PFコミックス版よりも、話数が増えた形になっているのだ。ううむ。こういう再発のしかたは結構、画期的ではなかろうか。
 要するに、そんだけネタがまだあったということでもあるんだろうなあ。この調子で一冊ごとに一話増えていくんだろうか。だとしたら、全部買うしかないのか……。まあ、もともと連作短編的な一話完結の作りだからできた技ではあるので、後半の続き物話になってからではこうはいかんだろう。それでも話数を増やせるのかどうか、その辺が今後の見どころかも。
 この人は、こういうたわいもない話の中に、ちらりと幻想的なシチュエーションを混ぜてくる話の方が、のびのびとしているなあ。シリアスに引きずられるのも分かるけど、飄々とした話をもっと読みたい気がする。でも、『エンジェリック・ゲーム』と『ブルー・インフェリア』の続きもやっぱり読みたいんだよなあ。うーむ。
 そうそう、カラーの色使いは相変わらず絵柄の柔らかさに比べて妙にどぎつい。補色を使いすぎだよ、こりゃ。(1997.5.1)

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ハッピー・マニア

 安野モヨコ
 祥伝社 96.4.15
 フィールコミックスGOLD
(メモ)
 本当に欲しいものは最初から失われている。そんな時代にどうやって生きていくのか、ってのは結構、普遍的なテーマなんだけど……。しまった。こんな大技があったとは。
 いや、まいりました。その状況を認識しない、なんつー手があったなんて。うかつといえばうかつだったな。そりゃまあ、当然、逞しく生きてけるわな。
 しかし、これは主人公に共感できるかどうかで、読後感がまったく変わってくるよなあ。ノれば、これほどかっ飛んで、痛快な話はないだろうし、ソればこれほど虚無感を感じる話もない。綱渡りをしていることに気が付かずに突進しつづけるのをカッコいいと思うか、単なる馬鹿だと思うか、ってとこか。
 実は私は失敗。結構、寒い気分になってしまった。だって、しょーがないじゃん。どうしたって、タカハシ君に感情移入しちゃうよなあ。ああ、こんな女に惚れてしまうとは、という惨めさが何とも言えず、最高。しかし、タカハシ君に感情移入してしまうと、明るく楽しく読むというより、徹底的に自虐的な楽しみになってしまうのであった。うーん。
 でも2巻以降もやっぱり買っちゃうよなあ。ちぇっ。(1997.5.10)

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聖・はいぱあ警備隊 5

 森生まさみ
 白泉社 97.5.10
 花とゆめCOMICS
(メモ)
 うあああ……。い、いかん、し・あ・わ・せ、だーっ!
 ぜーぜー。なんて理性に悪いマンガなんだー。この感情過多な描写がたまらん。ラブコメかくあるべし! 女の子が、おでこにキスされて、涙ぐみながらニッコリ微笑むなんて、今時反則だあー! ……ちくしょー、嬉しすぎるじゃねーか。何か、完全に作者に弄ばれてるぞ、私ゃ。
 それにしても、相変わらず笑顔と泣き顔が上手い。個々のシチュエーションと感情に応じて完璧に描き分けているんだよなあ。そういう基本的なところの見せ方が上手いから、コメディもシリアスも両方イケるわけだな。
 逆にいうと、読む側にもそういった描き分けを判別する能力を要求してしまう部分があるかもしれない。その辺が通受け(?)する理由かって気もするな。(1997.5.10)

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天使のフェロモン 1

 池沢理美
 講談社 96.12.12
 講談社コミックスフレンドB
(メモ)
 表紙が格好良かったので、気になってたんだけど、1巻・2巻両方がそろってるところがなかなか見つからず、買わずにいたもの。とうとう見つけちゃったよ。こりゃ買うよな。
 と、いうわけで、買うときになって初めて裏表紙のあらすじを見ると……何と「サイエンス・サスペンス」だったのかー! うーむ、SFものの血が呼ぶのか……。
 中身はばりばりシリアスのサスペンスもの……って、あらすじと説明が変わらんな。謎が提示され、ヒントが示され、一つ謎がとけると、次の謎が……、という非常にちゃんとした作り。ぐいぐい読ませるけど、個々のキャラクターの屈折とかが今一つ描き込まれていかないところが、ちょっともったいないかな、という感じも。うーん、ストーリー進行がもたつくのも辛いし、痛し痒しか……。
 凄いのは、巻末の広告を見る限り、コメディ調の作品が多い人みたいなんだけど、この作品に関しては、絵柄まで変えてきているところ。絵柄や構図に、清水玲子の影響を感じるのは私だけ?
 と、いうわけで2巻に続く。(1997.5.11)

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天使のフェロモン 2

 池沢理美
 講談社 97.4.11
 講談社コミックスフレンドB
(メモ)
 そうか……クローンものだったのか。それで主人公の名前が晶って、「輝夜姫」みたいだな。まあ、いくら絵柄が通じる点があるといっても、偶然だろうけど。
 トランスジェンダーものでもあるんだけど、男に変身するのが嫌、という部分がだんだん薄れてきているのが残念。もっと悩み苦しんでほしいなあ。
 感情の爆発の表現が今一つ物足りないのも惜しい。特に男の子がみんなしてクールすぎるぞ。これから追い詰められていくと変わってくるのかなあ。
 あと、話が分かりやすすぎるような気も……。まあ、最近の読者はこういう話に慣れてないだろうから、しょうがないか。そういう意味では、わりと教育的な作品かもしれん。
 とにかく、続きがはやく読みたい……。(1997.5.11)

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君が世界を回してる…!!

 安孫子三和
 白泉社 97.5.15
 HLC
(メモ)
 安孫子三和、久々のコミックス、と思ったら出産してたのね。知らなかった。
 充電期間を置いたおかげか、幸せパワー大爆発。この前向きさと、家族愛の徹底的肯定は、荒んだマンガやアニメばっかり見ている身には救い以外の何物でもなし。ああ、心が和む……。
 主婦をやってた母親が、55歳になったのを機に、夢だった独り暮らしを始める、という話を軸に、仕事に挫折して戻ってきた娘や、同居している息子夫婦との交流が、実にほんわかと描かれている。その中でも、特に、主婦業に撤してきた母親のささやかな「夢」に対する優しい視点が、なんともいえず、いい。我が侭だとは分かっているけど、でも、という願いを、受け止めて応援する家族。くーっ、泣かせる!
 最後は、挫折していた娘も夢を見出して、おしまい。これで終わりはもったいないような気がするけど、構成的にはこれで完璧という気もするから、いいか。
 母の日のプレゼントに最適、かもしれないけど、読んだ母がその気になって独立しちゃっても私は知らんぞ。(1997.5.11)

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百鬼夜行抄 3

 今市子
 朝日ソノラマ 97.5.20
 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス
(メモ)
 相変わらずの覚めた視点が、妖怪変化を描くのにぴったり。人間とは別の何かを描こうとするときには、やはり感情移入しすぎては駄目なんだろうな。水木しげるもそういうとこがあるような気がする。
 守り神の話(「見知らぬ花嫁」)が私のお気に入り。見える人には見えるが見えない人には見えない、という仕掛けにやられた、という感じ。オチも結構幸せだし。最後の木の枝にとりついた霊と泥人形の話(「言霊の木」)も、いい話。
 何か、どこがどう、と語りにくい人なので、もうちょっと時間をかけて読んでいかんと駄目か。問題は視点の置き方なんだと思うんだけどなあ。むむむ。(1997.5.11)

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トラブル・ドッグ 3

 六本木綾
 白泉社 97.5.10
 花とゆめCOMICS
(メモ)
 ううむ。なんか、すっきりしない。
 特に悪役の手口が凄いわけでもなく、ラブコメ部分が楽しいわけでもないので褒めるに褒められない。困った。いや、つまらなくはないし、結構好きなんだけど。
 とりあえず、ここに来て悪役側の描き方に深みが出てきたのは嬉しい。単純に不快な悪党が出てくる話を読まされるのはかなわんからなあ。
 視点の置き方は、最近の成田美名子的な部分があると思うんだけど、その視点と、キャラクターもの的な部分がかみ合いきっていないんじゃないのかなあ。もっと別の短編が読みたい気がする。(1997.5.17)

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崑崙の珠 6

 長池とも子
 秋田書店 97.6.15
 PRINCESS COMICS
(メモ)
 ううむ、結局、似たようなパターン3連発だったわけか……。この懲りなさ加減が男の悲哀だねぇ……。またかと思いつつ泣けたよ、こりゃ。奥さんの話に比べればお涙頂戴度は低いが、それでもなかなか。
 しかしこれで、主題が男の懲りない愚かさであることが明確になった(本トか?)。さすがにこれで同じパターンは打ち止めだろうから(だと信じたい……)、これからこの主題をどう展開するのかが見どころになりそう。まあ、伏線は山ほどはっているから、集約させ始めたら速そうだけどね
。(1997.5.18)

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はらったまきよったま 6

 中貫えり
 角川書店 97.5.17
 あすかコミックス
(メモ)
 久方振りの6巻。
 麦子がだんだん背が伸びてきている(という表現なんだろうなあ)のは気のせいではない?
 まあ、そんなことはどうでもよい。とにかく私は後半の2話がお好み。誘拐話は、作者自らの設定へのつっこみが楽しい。クリスマス話は、落ちが見えていても泣ける。フィンランドの歴史と絡めるところがお見事。
 ラブコメが無かったのが残念といえば残念だけど、その分、神楽坂&麦子それぞれのキャラクターの魅力を最大限利用できた感じもあるので、痛し痒しか……。むむむ。
 関係ないけど「どんぶらこっこ」の続きが読みたいなあ。(1997.5.18)

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こどものおもちゃ 6

 小花美穂
 集英社 97.5.20
 りぼんマスコットコミックス
(メモ)
 がーん、「思っているだけでいい」なんて、親友が同じ男を好きだなんて、そんな三流少女マンガみたいな展開でいいんかーっ!……と、思ったら、一ひねりはあるので一応は安心。
 しかし、この程度の三角関係では「あずきちゃん」にも負けているぞ。もっとどろどろせにゃあ。もともとどろどろは得意だったはずだし。そういやあ、この巻の途中から雑誌で追いかけるやめちゃったんだっけ。直純くんはいいんだけどね。意地悪なとこがグー。ま、続きに期待するしかないか。
 こうして読むと、アニメは独自の解釈で突き進んでいるみたいで嬉しい。そういう点では原作とアニメの関係が幸福で嬉しいなあ。(1997.5.18)

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そりゃないぜBABY 11

 立野真琴
 白泉社 97.5.25
 花とゆめCOMICS
(メモ)
 ついに完結。まあ、ラストは予定されていたものをきっちり、という感じ。それでいいのだ。
 家族の再構成という少女マンガの原点的物語(母恋ものとかそうでしょ?)を、現代的(道具立て自体は古いんだけどアレンジの仕方がね)に蘇らせたという意義は結構大きいかもしれない。逆にいえば、少女マンガは家族という枠組みを肯定的であれ否定的であれ、意識し続けているということの一つのあらわれでもあるのだけれど。
 血のつながりのない父と子の絆を、同じ女性を愛する、という仕掛けで浮き彫りにする……と書くと陳腐だが、それをちゃんとドラマ的に盛り上げつつ、どろどろにしないとこが作者のセンスなのだな。
 この巻は、さすがに長い連載のラストだけあって、ちょっとした1コマに、脇役も含めそれぞれのキャラクターの表情を何げなく描き込んであるのがなんとも嬉しい。その上でサブストーリー的な部分は全部その先を示唆するだけで、切り落としたのも潔い。こうきっちり終わられては、終わって残念とかそういうことは書けんわな。
 しかし、よく考えると、性の問題抜きで、かっこいい旦那と出来のいい子供四人を労せずして(?)手に入れるという女の夢的話のような気もしてきたな。そこがまた少女マンガの基本的問題を示唆しているような気も。(1997.5.24)

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オトナになる方法 10

 山田南平
 白泉社 97.5.25
 久美子&真吾シリーズ 6  花とゆめCOMICS
(メモ)
 マックな表紙がうれしいシリーズ完結巻。
 いやー、やっぱり底の深い人だったなあ。最初は同じ学年繰り返したので、こりゃだめか、単なるキャラクターもので終わりか、と思ったけど、ちゃんとキャラクターが年を取るようになってからは凄かった。「成長すること」そのものを一つの主題としたこと自体、相当な冒険だったはずだけれど、それをここまでやってみせた功績はでかい。偉い。
 成長するってことは、つまり変わっていく、ってこと。普通、キャラクターについたファンは、そのキャラクターがどんどん変わっていったら離れていくよね。それを覚悟の上できっちりやってみせたとこが偉いんである。内面的なところだけではなく、絵的にもそれ(成長ね)をちゃんと見せてたからなあ。やはり凄い。
 正直、最終話の大人になったあとの話はシリーズを終わらせるためには必要なのかもしれないが、話としては余分、と思ったけど、もう一度読んでみると、真吾と穂乃香が避妊の成功度について話してたりするし、得意の偶像破壊(?)パターンは健在なので、ちょっと安心。
 はてさて、これから何をやらかしてくれるか、楽しみだなあ。
 関係ないけど、次回作(『紅茶王子』)の男性ファンへのサービスってあれか?(1997.5.24)

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イリュージョン・フード・マスター

 那州雪絵
 白泉社 97.5.25
 花とゆめCOMICS
(メモ)
 いやー、これがシリーズになってそのシリーズがメインの単行本が出るとは思わなんだな。
 那州雪絵のギャグサイドが堪能できる一冊、と書けばおしまいといえばおしまい。まあこういう肩の力の抜けた作品もたまにはよいよね。あ、でも実は『月光』のセルフパロディという可能性も捨てきれないので油断は禁物かも。
 同時収録の短編のうち、「踏まれた天使のように」は、いかにも那須雪絵らしい、取り返しのつかないことを取り返しのつかないままに受け止める心情を淡々と描く佳作。こういうのをたまに描いてくれるので、目が離せないんだよなあ。(1997.5.24)

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朝からピカ☆ピカ 3

 山口美由紀
 白泉社 97.5.25
 花とゆめCOMICS
(メモ)
 山口美由紀の試行錯誤がうれしい。
 それにしても、最初の家族再構成の仮面を完全に捨てきって、露骨に恋愛入門篇に持っていくとは思わなかったなあ。今回親の存在が目いっぱい希薄だし。
 この巻は脇役二人に焦点をあてた番外編に近いけど、その分、作者のキャラクター指向が素直に出ていて明解。適度な屈折具合が心地よい。
 しかし、本命は同時収録の短編「シンデレラ・ポイス」。この過剰なロマンチシズムこそ、山口美由紀の本領ってやつですがな。そういえば、この人のこの手のストレートな少女マンガは久々かも。性格のきつい女の子の表情が、ふと柔らかくなる瞬間の描写が快感。(1997.5.25)

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ありのままの君でいて

 日高万里著
 白泉社 97.5.25
 秋吉家シリーズ 3
 花とゆめCOMICS
(メモ)
 あれよあれよのシリーズ第3段。  今回は恋の永遠でないことを主題にした表題作と、一転して待ち続ける女の話「愛のカタチは揺れるコスモス」というナイスなタイトルの短編の組み合わせ。この二つを一緒のコミックスに入れてくるあたり、作者のただ者でなさが感じられる。深い。
 ただ「愛のカタチ…」はちょっとやりすぎでは、という感じも。まあ、いいのかなあ。少女マンガだし。
 表題作は気持ちが別の人に移っていくところの描写が秀逸。ドロドロさの加え具合もまあまあか。それにしても、女の子より男の子の方が色っぽく描かれているのは、やはりニーズに答えているのか? ううむ。(1997.5.25)

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竜の結晶 3

 もんでんあきこ
 集英社 97.5.24
 ヤングユーコミックスコーラスシリーズ
(メモ)
 うわー、表紙がマックばりばりだあ。
 格闘技マンガから家族再構成へ、そしてさらに子育てマンガへ(多分また格闘技に戻るみたい)。この変幻自在ぶりがヤング系レディコミの真骨頂かも。
 どっかで前に書いたような気もするけど、この作品のような肉体の描写こそ、少女マンガが80年代に手に入れた最大の成果ではなかろうか。いや、別にエッチな描写が嬉しいわけでは……ごにょごにょ。
 作品全体に通底するテーマが、「強さ」と「弱さ」とは何か、というところが明解になったところで、つづく、とはこりゃ上手い。作品の表面的な表情はどんどん変わっていっているけれども、この主題だけは確かに一貫している。
 さて、格闘技ものとしての部分が今後どのように展開するのかが今後は楽しみ。(1997.5.25)

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