季刊 本とコンピュータ 1998年冬号

出版社
大日本印刷
発行日
1998.1.10
メモ記入日
1998.2.17
〈メモ〉
 買ってから随分長い間積んでおいた気がするなあ。読むのはあっというまなんだけどね。
 しかし、今回の読みどころは……と考えるとちょっと困ってしまう。全体として、刺激的な記事が多いのだけれど、どれが一番面白かったかと考えるとなんだかはっきりしない。甲乙付けがたい、という感じでもないような気がするし……。
 とりあえず、巻頭ルボの永江朗「欲しい本が書店にない!」は、異様なまでの出版点数の伸びに対する危機感が、程よく見えて、なるほどなるほど、という感じ。こうも早く絶版になるんじゃあ、単行本も雑誌と同じだよな。
 それから、滝沢武「『世界大百科事典』電子化日誌」を読んでいたら、CD−ROM版が欲しくなってしまった。百科事典とは何かをCD−ROM化の過程の中で編集者の側から捉えなおそうという視点が刺激的。でもMacOS版はPowerPCオンリーなんだろうなあ。
 「座談会 電子図書館で何を変えるか?」は、国立国会図書館の田屋裕之氏の独壇場。でも、国家レベルのプロジェクトが、多くの人にとって遠い物でしかない、という事態は変わらないような気もする。所詮日本人はお上意識から抜け出せないのかなあ。うーむ。
 「特集 道具としてのインターネット」は何だかいま一つ。結局、WWWの話しかしてないからかもね……って、自分もこんなサイト作ってて書ける立場じゃないか。
 そんなこんなで、松田哲夫「印刷に恋して 第三回 手動写植機に夢中になる」の、いかにも楽しそうな体験記(機械を動かす、という快感が伝わってくる)や、片塩二朗「活字に憑かれた男たち 3 神を創った先駆者・三谷幸吉」の、先駆的な研究者への愛情溢れる批判などにぐっときてしまうのであった。あ、それから、萩野正昭「異聞・マルチメディア誕生記 第三回 レーザーディスクに見た夢」が、本人の追い詰められながらの試行錯誤の話が出てきて、ぐんぐん面白くなってきた。
 うーん。連載が面白いのはいいけど、どれも過去に視線が向かっているのが気になるといえば気になるな。結局、未来を愛情を込めて語ることがいかに困難であるか、ということが、明確に出てしまっている、ということなのかもしれない。もっとインターネットについて愛をもって語れる人を登用しないと、本としてのバランスがとれなくなるんじゃないかあ。


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