マーク・ケイツビーの博物画 ウィンザー城王立図書館秘蔵水彩画集

出版者
アートコンサルタント・インターナショナル
出版年
1997
メモ記入日
1998.4.4
〈メモ〉
 ニューオータニ美術館で1998年1月28日〜3月13日にかけて開催された「マークケイツビーの博物画――18世紀 描かれた花や鳥たち」展の図録。この他にも、1997年9月20日〜11月3日の会期で郡山市立美術館、同年11月8日〜30日の会期で奈良そごう美術館、1998年3月18日〜4月5日の会期で神戸阪急ミュージアムで開催されている。
 なんだ、デパート展が多いじゃないか、と侮るなかれ。内容は濃い。オーデュボンに先駆けること約一世紀、アメリカ大陸の鳥、魚、哺乳類、爬虫類などを記録したケイツビーの自筆水彩画を間近で見ることができるというおいしい企画である。……と書きつつ、これを見るまで、ケイツビーについては全然知らなかったんだけど。
 ケイツビーについて詳しく知りたければこの図録に収録された、エイミー・R・W・メイヤーズ「博物誌を極めて――マーク・ケイツビーの描くアメリカ博物画」という論文を参照のこと。ジョン・レイとの関係や、エーレットとの共作(これも展示されていた)も興味深い。メーリアンからの影響などについての指摘などもあり、この論文のためだけでもこの図録は入手する価値がある。
 ケイツビーの代表作は"The natural history of Carolina, Florida and the Bahama Islands", 1731-1747.という本で、今回展示された水彩画も、基本的に主としてこの著作の図版の原稿として描かれたもの。展示点数は60点と比較的少なめだが、そのおかげで、全展示作品をカラー図版で紹介、しかも、1図版に1ページを割くという贅沢な作りの図録になっている。
 メイヤーズ以外の収録論文は、ヘンリエッタ・マクバーニー「ウィンザー・ボリューム」。展示された自筆画がとじ込まれていたウィンザー城王立図書館所蔵の"The natural history of Carolina..."に関する書誌学的考察である。こちらも内容が濃い。
 巻末の参考文献も充実。完全に玄人向けの作りなところが凄い。英国王室図書館の意地を見た。


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