天然コケッコー 1〜3(1997.10.4)
オリスルートの銀の小枝 4(1997.10.19)
Romantic 手塚治虫の少女まんが傑作選(1997.10.19)
BЬでmf(1997.10.19)
エンドレス ロード(1997.10.19)
彼氏彼女の事情 3(1997.10.19)
恋について語ってみようか 2(1997.10.19)
君の海へ行こう(1997.10.19)
まぼろし谷のねんねこ姫 3(1997.11.16)
RED DRAGON 3(1997.11.16)
リターン 7(1997.11.16)
くらもちふさこ
集英社 1995.7.24(1) 1995.10.24(2) 1996.2.24(3)
ヤングユーコミックス
(メモ)
『ユリイカ』のインタビューを読んで以来、読みたくてしょうがなかったんだけど、いざ読み始めてみると、これがどういうわけか、一気には読めないのであった。で、とりあえず、1巻から3巻まで読んだ段階での中間報告。
とにかく、技法・手法の実験場であるというのを確認。新しい手法をガンガン試しながら、隙を突いていきなり古典的手法をぶちかましてくるあたり、尋常ではない。
もちろん、そのために一気に読めない、というわけではない。技法の実験場でありながらも、よくある実験的作品には決してなっていないのだ。あくまでマンガの文法を踏まえた上で、その中でどのような表現が可能なのかを確かめようとしている感じ、といえばいいだろうか。
一気に読もうとすると疲れるのは、個々のキャラクターがどこまでも他者として描かれているからだろう。感情移入しにくいのである。主人公ですら、自分が持っている自分のイメージと、自分の行動との差異に戸惑う存在として描かれている。別に謎があってそれが解かれていく、という話ではない(そういう話も少し組み込んであるけど)。人のことは(例え自分自身のことでも、ましてや家族・親友のことであっても)分からない、ということが、ただただ当たり前のこととして、描かれている話なのだ。
例えば3巻の修学旅行の話は、転校生である主人公の彼(何と古典的な設定!)がかつて暮らしていた東京に行く話である。ここでは、いつもの舞台である田舎では大人びて見えるその少年が、単なる子どもに見えたりする。あるいは、東京に憧れていた主人公も、東京に距離感を感じたりもする。
このエピソードはちょっと分かりやすすぎるが、1巻の頭から、転校生という典型的な他者が闖入することによって、今まで他者として認識されなかった(つまり分からない部分がないように見えていた)村の人達や、自分自身の中に、主人公から見えない部分がある、ということが明らかになっていく、というエピソードがてんこ盛りだ。
そうした主題と、手法との連携が多分、この作品のキーポイントなのだろうと思うのだけれど、そこまで明確に分析する力は私にはないのだった。続きを読んだら少しは見えるかなあ。(1997.10.4)
紫堂恭子
角川書店 1997.8.1
ASUKA COMICS DX
(メモ)
シリーズ完結編。ううむ。トランスジェンダーもので、性の問題を回避して、性別を越えた人と人との繋がり、という展開に持ってくるとは思わなんだ。ちょっとやられた、という感じ。
でも、そこが物足りないところでもある。ジェンダーの問題を語ることなしに、この作品のもう一つのテーマである人間の怨念について語ることができるとは思えないのだけれど……。
ファンタジー向きだとはいえ、ある意味毒気のない絵柄が裏目にでたという気がしなくもないなあ。そういう意味では、『エンジェリック・ゲーム』のような、人のダークサイドと(ファンタジー抜きで)正面から向き合う作品が未完に終わったのは、この作者にとって結構不幸なことだったのかもしれない。
ま、次に期待ということで。(1997.10.19)
手塚治虫
光文社 1997.8.10
光文社コミックス
(メモ)
昭和30年代の少女マンガ黎明期を支えた雑誌『少女』(光文社)に掲載された手塚治虫作品のセレクション。中心は『そよ風さん』とその続編『ひまわりさん』、それに短編を数編組み合わせた構成だ。原稿からではなく、印刷された雑誌からの復刻というのがありがたい。当時の雰囲気をかなりの程度味わうことができる。部分的にではあるが広告まで復刻してあるのが偉い。
もちろん絵柄や物語の面では古さを感じてしまうのではあるが、特に『ひまわりさん』はこの時期の作品としては異様なまでに先進的だ。手塚治虫おそるべし。おとなしく献身的な「女らしい」女の子と、活動的でちょっと乱暴な「女らしくない」女の子という対比を持ち込み、その二人の間にまじめな理想的少年を配置して、三角関係まで導入してしまっている。ストーリー的には試行錯誤の結果、破綻した、という感じではあるが、母恋ものという少女ものの定番フォーマットを踏まえつつ、後の少女マンガにもつながっていく実験的試みを行っていたという点は評価してしすぎることはないだろう。
一方で絵的な面では、手塚が少女マンガに残したものは意外に大きくはないことも確認できる。
とにかく、色々な意味で貴重なドキュメントだ。こうなると手塚以外の作品も復刻して欲しいもの。特に高橋真琴をぜひ!(1997.10.19)
よしまさこ
講談社 1997.7.11
講談社コミックスキス
(メモ)
たまには、こういうほんわかした話もいい。
弱小オーケストラの人間模様を、ちょっとおっとりしたお嬢様タイプ(でも結構たくましい)のバイオリン奏者の女性を中心に描いた作品。
特に主人公にぞっこんの若き楽団マネージャーが振られる話が実にいい話でほろり。すぐに次の女性が現れてしまうのは、ちょっとご都合だけど、まあ、それが厭味にならないところが持ち味ってやつですか。
最初は全然思わなかったんだけど、何度か読んでいるうちに、絵柄に陸奥A子に共通するものがあるな、と気づいた(よしまさこファンには叱られる?)。それは作品全体の雰囲気にも言える、というより、その雰囲気自体を支えているのが絵柄なのか。ま、乙女ちっくの歴史的展開に想いを致しながら読んでも良いかもね。(1997.10.19)
六本木綾
白泉社 1997.8.10
花とゆめCOMICS
(メモ)
セリエ・ミステリーとセリエX(そんなのあったのか)に掲載された短編集……なのになんで「花とゆめCOMICS」なんだろ? 別にいいけど。
ちゃらちゃらしてて手が早くて強引だけど、時々妙に優しかったりするって感じの男がお好みならお勧め、ってなんか身も蓋もないな。
といいつつ、限界を感じている女がそれをちょっとしたきっかけで突破する、というのが裏テーマと見た。基本的にこの人の描く、自分の足で歩くことを覚えていく女の子は好きだなあ。でも男の子たちの健気さの方に目を惹かれてしまうのがなんというか。
描ける顔のバリエーションが少ないのが最大の欠点なんだけど、短編だとそこが目立たない。あと悪党描かせるとドツボに嵌まるパターンが多い気がする(だから私は『トラブル・ドッグ』をあんまし好きになれない……)。と、いうわけでこういう前向きな短編をもっと読みたいなあと思う私である。(1997.10.19)
津田雅美
白泉社 1997.8.10
花とゆめCOMICS
(メモ)
いやはや、愉快愉快。先生との対決話からしかと話の発端まで……って書くとなんか凄いハードな話みたいだな。基本的に根っからの悪人は出てこないのでそういう(ってどんなだ)話にはならないのだけど。
何度も書いているような気がするけれども(別のとこでね)、人より優れてしまった人を描く、という主題がこれほどこの作家にぴったりだったとは、私も見る目があるなあ、としみじみしてしまう。いや、ほんとに、これで厭味なキャラクターにならないんだから凄いよな。
鮮やかな画面構成も相変わらず。表情の変化と視線の交わしあいの描き方なんぞも実によい。基本的には描き込みの少ない絵柄なのだけれど、情報量の少なさを画面とコマの構成で補ってしまうところが偉い。
でも、今回の見どころは、ちょっとエッチな(?)キス・シーンなのであった。最後にギャグで逃げるところが読者泣かせではあるけどね。でも、この先どこまで描くのか、気になるよなあ。やっぱり。(1997.10.19)
ささだあすか
白泉社 1997.8.10
花とゆめCOMICS
(メモ)
うわあ、いちゃいちゃだあ。
というわけで、タイトル作のシリーズは、徹底した(?)いちゃいちゃ編攻撃。ちょっとこの少年は爽やかすぎだけど。まあ、いいか。ハッピー・エンドのちょい先まで描こうという努力は買った。
同時収録の短編『Q』と『空はいつか晴れるでしょう』もそうだけど、のほほんとした話ではあっても、人と人との距離感の変化、みたいなものをどう捉えていくのか、という問題意識が結構一貫しているような気がする。完全に密着ベタベタ、というのを描くのは不得手なのではないかという気がするけど、徐々に接近していく感覚を、絵の中での視点の変化とかで表現するのが結構巧いような気がするなあ。ちゃんと分析してないけど。
あ、あと、全然関係ないけど、この人の赤面したときの表現(細い斜線が顔にラフにかかる)が、なんだかよくわかんないけど好きなのさ。(1997.10.19)
岡野史佳
白泉社 1997.8.10
花とゆめCOMICS
(メモ)
うわあ、ラブラブな上にロリロリな岡野節が爆発だあ。ちょっと目眩くるな、こりゃ。この人にはダークサイドの作品もあるので一筋縄ではいかないけど、こういうライトサイドの作品集を読むと、ちょっとメロメロになってしまうのであった。
中学生の女の子の水着姿にドキッとさせるなんざあ、もはや犯罪的。しかし、そのあざといまでの仕掛けも、一度はまればもう快感である。露骨にエッチなシーンは皆無だし、ダイビングがテーマにもなっている健康的な作品のはずなのに、ああはずなのに……どうして、こうなるんだか。うーむ。
南の島の天真爛漫でちょっと生意気な女の子、というあまりにも狙いすぎの設定に拒否反応を起こすかどうかで、作品の評価は決まるだろう。一昔前なら、女の子が高校生でもできたネタかもしれないけど、今となっては中学生がギリギリの選択だったのか、という気もしてくる。うーむ、時代だね。
同時収録の短編『緑のゆびさき』(SFだあ、ワーイ)も、ちょっとロリ入ってるな、こりゃ。「きみの花に水をあげたくて月に来たんだ」とか言って、両手ですくった水を女の子に飲ませるあたりなんぞもう、クラクラである。こういう恥ずかしげもない話を、アニメの影響を受けた線の絵と、いかにも少女マンガ的な画面構成の組み合わせでやってみせるところが、この人の凄さだよなあ。(1997.10.19)
ふくやまけいこ
講談社 1997.8.6
講談社コミックスなかよし
(メモ)
徐々にラブコメ色を強めつつ展開する第3巻。
大量に登場するオバケの造形にふくやまけいこの真髄を見るもよし、里穂ちゃんのぽーっとした表情に萌え萌えするもよし。徹底的に毒抜きされた世界を許容できさえすれば、まああとは好きなように読んでくれ、という感じか。
しかし一番おいしいのは尾花丸の描き方だろう。毒抜きされた世界の中で、ただ一人絶対に成就することのない片思いという設定を背負わされていたりするところが実になんともである。この巻のラストも締めてるしね。ただ一緒にいられさえすればいいって、あんた、ちょいと可愛い過ぎるがな。
それにしても、いくら『なかよし』だからっていっても、もうちょっと毒出してもいいんじゃないかなあ……。(1997.11.16)
佐藤真理乃
ヒット出版社 1997.8.31
(メモ)
おお、ようやく面白くなってきた感じ。やっとこ本筋突入か。
結局、最初の方の二人のラブラブ話ってのは、ここから始まる話のための枕なわけだよなあ。どうも構成が納得いかん……。
今更そんなこといったって、なのではあるけど。
とりあえず、捨てた側より、捨てられた側の方が、立ち直りが早いってのが今回のポイントなわけだな。その辺りの差異を際立たせる場面になると、実にいい表情を描く。トータルに見れば、あんまり上手いとはいえない絵ではあるけど、その辺の味が結構好みだったりする。この先、そういうシーンをどう使ってくるかがポイントか。(1997.11.16)
三浦実子
講談社 1997.8.7
講談社コミックスフレンド
(メモ)
完結編。
ううむ完結したらいろいろ書こうかと思って考えていたこともあったのだけど、こういうラストでは……むにゃむにゃ。いや、終わり方としては悪くない。念のため。むしろ鮮やかだといっていい(ちょっと褒めすぎ(?))。
ただ、この作品の最大の面白さはトランスジェンダーものとしての部分にあると思っていた私としては、ありゃりゃ、という感じなのでございますですよ。死んで魂が女の子の体の中に入ってしまった、というだけなら、特にびっくりするような話ではないのだけれど、「女の子」でいて男に頼ることを「楽だな」と感じてきたりする辺りが実に良くって、私は結構燃えていたのであった。女として男に頼るのは楽だけど、それでも女としてのセックスはできない、とかね、そういう辺りが。いかにも最近のフレンド系という感じのやや荒っぽいけどシャープな描線のおかげで、女性の肉体表現とかがくどくならないところがまた良かったりしたし。
まあ、結局最後もトランスジェンダーではあるし、生まれた時から女の子であることとの対比は明確ではある。問題は、死んでしまった男の子が徐々に女性化、ではなく中性化することで、「好き」という気持ちを自然なものにしてしまっている点(BANANA FISHみたいだな、そういやあ)。友情と恋愛の境界領域を描く、というのが一つのテーマだったと思うのだけれど、そこがぼけちゃった感じがするのだな。どうせやるなら、もっと男女の境界領域で苦しんでほしかった……。惜しい。
とはいっても、妙に現実的で醒めた視点と、ほとんど思い入れだけで展開しているような甘々な部分が混じり合ったこの味わいはやはり捨てがたい。先鋭ではないが今風ではある絵柄も結構好みかも。次も一応チェックかなあ。(1997.11.16)