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タイトル50音順リスト
著者別リスト


少女マンガ読書メモ(1997年8月〜9月)


決定版 辺境警備 2 懐かしいいたみ(1997.8.3)
ロレンツォ(1997.8.3)
つうかあ(1997.8.3)
もりたじゅん名作選 1・2(1997.8.3)
おまけの小林クン(1997.8.21)
NATURAL 4(1997.8.21)
八雲立つ 7(1997.8.21)
ONLY ONE 2(1997.8.26)
ハッピー・マニア 4(1997.8.26)
砂の上の楽園(1997.8.31)
ささやななえ自選集 3(1997.8.31)
いくえみ綾コレクション 1・2(1997.8.31)
希林館通り 3〜5(1997.9.7)
伊賀野カバ丸 1・2(1997.9.7)
マダムとミスター 4(1997.9.7)
未来のうてな 7(1997.9.7)
詩を聴かせて(1997.9.7)
トテモ美シイ夏(1997.9.7)
もうひとつの9月(1997.9.21)
雪の桜の木の下で…(1997.9.21)
クローバー 1(1997.9.21)


決定版 辺境警備 2 懐かしいいたみ

 紫堂恭子
 角川書店 1997.7.1
 ASUKA COMICS DX

(メモ)
 うーむ、やはり各巻描きおろし1本付きか……。こりゃ買うよな。ついでに微妙な(?)絵柄の変化を楽しむのもまた一興。新作部分の神官さんが何だかかわいくなっているのがおかしい。
 それにしても、最近の作品と比較すると、このシリーズの描きおろしの出来の良さはちょいと困りものだなあ。結局、作者の中でそれだけ作り込まれた作品であった、ということなのだろうけど。こういう作品をいきなり描いてしまったことは、作者にとって幸運だったといっていいのか悪いのか。
 この2巻ではカイルが登場。私好みのジュディスのエピソードなども収録。このあたりの話を読んでいると、辺境警備とグラン・ローヴァの後の作品(未完のものも含めて)の最大の欠点が、キャラクター配置のバランスの悪さにあるのではないか、という感じがしてくる。各キャラクターの対照が明解で、その対照の中から浮かび上がるものを核にして話が組み立てられているのだな。その辺が、何度読み返しても色褪せない、この作品の味わい深さの秘密なのかなあ。(1997.8.3)

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ロレンツォ

 長池とも子
 秋田書店 1997.7.30
 PRINCESS COMICS

(メモ)
 ううう。辛い。
 イタリアルネサンスを支えたメディチ家のロレンツォの青春時代(?)を描いた作品。
 が、これで終わりでは何も描いていないも同然だよなあ。打ち切りなのかもしれないけど、取り上げるポイントを過ったんじゃなかろうか。政治的な部分の描き込みが全然足りないのも納得がいかん。これじゃ、単なる不倫おやじだってばさ。
 政治的部分(つまりロレンツォの指導者として側面)が軽く流されているために、人物像が平板に……って、これじゃ何だかどこぞの投稿コーナーの講評みたいだな。そういうことを書きたくなっしまうところが辛い。本来、後悔をずるずる引きずる話を描かせたら天下一品の人なので、切り口次第では、もっとえぐい話になったはずなのだけれど。残念。(1997.7.6)

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つうかあ

 入江紀子
 集英社 1997.5.28
 ユーコミックス

(メモ)
 『なんぎな奥さん』とはまた微妙に(?)異なる夫婦もの。一応、設定などは多少違うけど、基本的な人物配置とかはあんまし変わらないのがなんというか。夫婦共働きの一つの理想像をほにゃらかした雰囲気で描き出す、というところでも共通している。
 あえて違うところを探すとすれば、夫婦、という関係そのもののあり方について語ろうという姿勢が明解なところか。
 最後の浮気ネタがなかなかのヒット。こういう話をドロドロさせずに描けるってのは得だよなあ。それとも、ドラマチックにならないから損なのか? うーむ。(1997.8.3)

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もりたじゅん名作選 1・2

 もりたじゅん
 集英社 1997.6.23
 集英社文庫(コミック版)

(メモ)
 1巻は「うみどり」、2巻は「嗚呼花の新小岩3丁目」という副題付き。副題といっても表紙では副題の方がでかいな。
 1巻は1970年から71年にかけて発表された作品からのセレクト。70年代初期の実験的とも見える過剰な表現が凄い。表題作の「うみどり」は、兄妹恋愛ネタのハシリといってもいいかもしれないが、血の繋がらない兄妹だけではなく、血の繋がった兄妹ネタも同時に絡ませるあたりがただ者ではない。また、「しあわせという名の女」では、もりたじゅんの表現の基本が劇画にあることが確認できる。話もバリバリの劇画調で泣かせる。すげえ。
 しかしその一方で、その魅力が新米婦警ものの「ごくろうさん」のようなコメディタッチの作品にあったことは、2巻の表題作「嗚呼花の新小岩3丁目」シリーズでも明白。このシリーズは1977年の作品で、さすがに絵も洗練されてきている。下町人情ラブコメの佳作、ってとこか。
 もりたじゅん的な身体表現は、なんというか、結局は早すぎたのではないだろうか。これが完全に少女マンガに吸収されたのは、レディコミのブーム以降のことだろう。1巻の帯に「少女漫画のリアリズムはここから始まった」とあるが、少なくとも肉体表現の面では、始まった時点で、既に到達点をも指し示していた感がある。
 ストーリー的にはかなり「少女マンガ」を意識して描かれた部分もあるような気がするが、全体としては、いわゆる「少女マンガ」を期待して読むとと痛い目に会う。少女マンガの主流からはもりたじゅん的な流れは消えたといってもいいような気がするが(ちょっといいすぎ?)、その失われた可能性を確認することができるだけでもありがたい復刊。続巻希望。(1997.8.3)

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おまけの小林クン

 森生まさみ
 白泉社 1997.7.10
 花とゆめCOMICS

(メモ)
 しまった! ショタネタもいけるのか、森生まさみ!
 と、いう感じの一冊。得意の必殺笑顔攻撃をばりばりかます少年を中心にした学園コメディたあ、恐れ入った。いや、こりゃ敵いません。
 前半の小林四人組(?)和解篇は、トラウマ抱えているのが主人公の少年だけなので、ちょっと物足りない感じ。どっちかというと、後半のよいこメダル篇の方が、残りの男二人の小林の微妙な心の揺れの描写などあったりして、個人的にはポイント高い。この二人、おいしいキャラなので、前半だけで終わっていたらもったいないところだった。
 残りのヒロイン小林は、根本的には森生まさみお得意の一途な女の子、というのが一貫しているためか、最初からキャラクターできあがっている感じ。この辺りが安心して読んでしまえる秘密か。
 しかし、そろそろシリアスものが読みたい気が……。(1997.8.21)

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NATURAL 4

 成田美名子
 白泉社 1996.7.10
 花とゆめCOMICS

(メモ)
 青森旅行篇その1。本当に展開ごとに切り口が変わっていく話だなあとしみじみ。
 CIPHERの頃から確立させた、主題を露骨に台詞にしない、ストーリーのキーになる部分を簡単に明らかにしない、感情を単純化して描かない、という方法論はここでも健在。軸になっているキャラクターが高校生の男の子、というおかげで、やや軽みも加わってなんとかバランスがとれてはいるけれど、基本的には案外読みにくい話なのでは、という気もする。
 背景などを含めて適度なリアリズムという感じの表現が、一風変わった観光旅行(?)の描写としてしっくりくる感じ。結構、お話的には重要な転回点になるような気がするんだけど、あくまでそういう盛り上げ方を排除するところが、凄い。ちゃんと読者はついてきているのか? と余計な心配をしてしまうな。
 ただ、宗教的世界の描写が結構続くのがちと怖い……。大丈夫かなあ。(1997.8.21)

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八雲立つ 7

 樹なつみ
 白泉社 1997.7.10
 花とゆめCOMICS

(メモ)
 『八雲』の方は、「捻れる黒髪」の完結話と、「海神を抱く女」の前半。そして、何より大事なのが、「きみとぼく」に掲載された短編が収録されているところ。
 「捻れる黒髪」は、物語的には七地と闇己の仲たがい(?)、という話のはずなのだが、なんだか盛り上がらない。「海神を抱く女」も面白くなるのは、とーちゃん出てきてからだしなあ。
 と、いうところで気が付いたけど、結局、魅力的な女性キャラクターを描き出す、というところに問題があるんじゃなかろうか。『花咲ける青少年』は女の子があっちゃこっちゃ行って次々といい男と出会っていく話だったが、この巻での『八雲』はそれとはまったく逆の展開になっている。どう考えても『花咲ける…』の方が面白かったからなあ。ううむ。
 別にどこが悪い、というわけではないんだけど、やはり同性を格好良く描くのは難しいのかも。露骨に嘘になっちゃうと興ざめだし。その辺りのバランスを考えると、こうなるのかもね。まあそれならそれで、もうちょっと女の闇の部分の怖さを感じさせてほしい、とも思うのだけれど。この程度ではまだまだ。もっと怖がらせてくれー。
 男はいくら格好良く描いても許されるし、面白さを損なわない、というのは、「左の炯」を読むとより明らか。こちらはあっと驚く(?)テニスもの。これだけの話で終わってしまうのはもったいない。単行本に入らない内は、続編の望みもあったけど、もうこれでなくなったかな? ちょっと残念。(1997.8.21)

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ONLY ONE 2

 藤村真理
 集英社 1997.6.30
 マーガレットコミックス

(メモ)
 しまった! はつらつ(?)スポコンバレーボール少女マンガの復活か!と思ってたら、ただの先生への初恋物語になってしまった……うーん。やっぱり、こういう方が受けるのかなあ。何だか寂しい感じ。
 ただ、露骨な恋愛ものにせずに、先生のバレーボール選手としての部分に惹かれていく、という形を取っているあたりに、作者のバランス感覚がほの見える。ニブイ女の子に振り回される男の子の描写もグー……ではあるが、1巻の思い切りのいいバレーボールマンガぶりに比べるとやはりつらい。
 微妙な表情とか視線と絡みの使い方が上手くて読まされてしまうだけに、複雑な気分である。1巻と2巻を足して二で割ってくれー。(1997.8.26)

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ハッピー・マニア 4

 安野モヨコ
 祥伝社 1997.7.15
 フィールコミックスGOLD

(メモ)
 おおっ! 何だ、思ったより面白くなってきたじゃん。3巻がちょっとだれていたので、少々驚き。
 プロポーズ受けたとたんに不倫に突入とは、見事な展開。「恋愛」という名の呪縛にはまり込んでいく展開は、結構壮絶な何かを描いてくれるのではないか、という期待を煽ってくれる。本当にそんな凄いものを描いてくれるのかどうかは、この先読んでみないと分からないけど、この期待感だけでもそれなりにおいしい。
 あとは、タカハシをどう使うかだよなあ。(1997.8.26)

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砂の上の楽園

 今市子
 朝日ソノラマ 1997.7.20
 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス

(メモ)
 おおっ! SFだあ……ってそんなこと書いたらネタばれだよおい。まあ分かってても面白さは別に変わらないからいいか。
 というわけで、表題作はちょっと『マージナル』風。キャラクターのちょっと普通でない感覚が、この人らしくていかにも。それが過去の傷と絡んでくるところもまた、という感じ。
 他の同時収録の短編は皆、まっとうな(?)ホラーもの。人の力の及ばぬものを人がコントロールすることの無謀さ、というのが、この人のホラーものの基本パターンなのか……っていうより、オカルト・ホラーものの定番なだけかな?
 収録作の中では「僕は旅をする」が一番好み。こういう悲しみを受け止める話を淡々とやられると、結構くるなあ。(1997.8.31)

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ささやななえ自選集 3 おかめはちもく傑作集/グレープフルーツ・ストロベリー

 ささやななえ
 講談社 1997.7.11
 KCデラックス

(メモ)
 80年代に突入。
 代表作「おかめはちもく」は5話をセレクトして収録。なるほど、これがあって、『なんぎな奥さん』とかがあるのだなあ、となんだかしきりと感心。夫婦日常ものの出発点であり、到達点でもある、という位置づけになるのかな?
 他はエッセイマンガの「おきらく日和」と、「グレープフルーツ・ストロベリー」の5話中3話を収録。後者はちゃんと(?)少女マンガなのが、なんだかおかしい。情けない男の子たちへのやさしい視点が、時の流れを感じさせてしみじみ。それにしても、こういうの描けるならもっと描いてほしい、と思ってしまう。
 巻末対談は吉田秋生と。吉田秋生がささやななえのアシスタントをした経験などを中心に語っている。ささやななえのことを「女性作家特有のエキセントリックさがない」って褒めてるけど、逆にいうとある人って誰かいな。ちょっと気になる……(1997.8.31)

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いくえみ綾コレクション 1・2

 いくえみ綾
 集英社 1997.6.23
 集英社文庫(コミック版)

(メモ)
 おお、いくえみ綾ってこういうマンガ描いていた人なのか。1巻は「エンゲージ」のみ、2巻は「以心伝心のお月さん」他1編を収録。
 家族同様、というのが一つの共通要素かな? あと、このパターンならこういう展開だろう、という予想を微妙に外してくるので、ちょっと驚いた。大枠としてはよくあるパターンの中なんだけど、細部の展開の印象が強いせいか、そういう感じがあまりしない。
 と、書きつつ、実は一番印象に残っているのは、女の子と男の子が腕を組んで街を歩く、というシーンだったりする(確か、どの収録作にも必ず一回はあると思うんだけど……)。多分、女の子の憧れの対象となるシチュエーションなんだろうね。それが実に楽しげに描かれていてほのぼのしてしまう……と思うあたりが、もう年だねぇ。
 まあ、そういうところが、この人の魅力なのか……どうかは、後の代表作を読んでみないとよくわかんないな。ああ、また宿題が……。(1997.8.31)

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希林館通り 3〜5

 塩森恵子
 集英社 1997.7.23
 集英社文庫(コミック版)

(メモ)
 この生々しさをどう表現したらいいものやら。
 その「生々しさ」は身体感覚的なもので、3巻のキスシーンの描写や、キスシーンを目撃した妹の嫌悪ともなんともつかない感情の表現に、その「生々しさ」を目いっぱい見ることができる。そういう意味で、3巻が一番盛り上がってる感じ。
 と、いうようなことをあるところに書いたら、知人に、むしろ倫理的問題の方が大きいのではないか、と言われてしまった。倫理的問題かー。うーむ。
 確かに、人間関係の割りきれなさを描いた上で、その割り切れなさに対して、どう自分自身の矜持を保つか、という問題は、結構大きいウェイトを占めているかもしれない。その緊張関係が作品の魅力の一つだというのは間違いない。
 関係性に対する過剰なまでの反応が、生々しさに繋がっているのだ、とか書くと我田引水になっちゃうか。身体感覚だけで語るのはやはり無理があったなあ、としみじみ。(1997.9.7)

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伊賀野カバ丸 1・2

 亜月裕
 集英社 1997.7.23
 集英社文庫(コミック版)

(メモ)
 少女マンガの体制をいかにして、脱構築(?)するか、という課題に果敢に挑戦する作者の熱気が伝わってくる。後に展開される少女マンガのパロディは、所詮これの焼き直しに過ぎないのかもしれない……と書くと褒めすぎか。いや、でも少女マンガに対する愛と憎しみが画面の隅々にまで溢れてるよな。すげえ。
 しかし、ヒロインの女の子、こんなに印象、というか出番少なかったっけ? ちょっと驚いた。
 1巻巻末には中尾隆聖による解説(?)あり。若き日の思い出や、アニメ版キャスティングのオーディションの回想などもあるので、その手のファンは要チェックか。(1997.9.7)

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マダムとミスター 4

 遠藤淑子
 白泉社 1997.7.25
 花とゆめCOMICS

(メモ)
 多分、いや、絶対にこれはお伽話でしかない。
 それでもこういう話には弱いんだよ。悪いか! えーい、こういう作品に救いを求めてどこが悪いんだ、何が悪いんだ、そのくらい別にいいじゃないか!……ぜーぜー、何を向きになってんだ、私は。
 まあ、このくらい向きになってしまうくらい、遠藤淑子の与えてくれる物語は、心地よい。簡単に救いなど与えられはしない、ということを百も知りながら描いている潔さが、読み手の弱さに見事に染み渡るのであった。その分、はまると抜け出せなくなりぞうで、怖い。こういう関係を手に入れられるなら死んでもいいとか思っちゃいそう。危ない……って、危ないのは作品じゃなくて私の方か?
 この巻では、今まで今一つはっきりしていなかった二人の関係が、明確になっていくエピソードが多い。結構、転回点となる巻かも。(1997.9.7)

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未来のうてな 7

 日渡早紀
 白泉社 1997.7.25
 花とゆめCOMICS

(メモ)
 まだ続くタイムスリップ篇。
 結局、「記憶鮮明」という主題をどこまでも突き詰めていこうとしているのだなあ、という感じ。転生と時間旅行ネタに絡めて、過去の家族との再会とか、さらりとやっちゃうあたりが実力だよな。
 僕地球よりも、さらに綿密に物語を設計してから描いている感じ。1冊読んだからどうこう、というのは難しいなあ、こういう場合。プロットが異常に複雑化しているので、1冊ごとの印象はどうしても薄くなってしまう。緊張感のある展開でぐいぐい引っ張っていく、という方法論もとらないみたいだし、なんだか評価しにくい話、というのが今のところの印象。完結してみたら、しまったー、こういう話だったのかあ、ということになると嬉しいんだけど、それはまだまだ先の話。(1997.9.7)

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詩を聴かせて

 日高万里
 白泉社 1997.7.25
 花とゆめCOMICS

(メモ)
 今回はつっぱりにーちゃん更正話か。
 心臓を病んだ美少女とくれば、こりゃ定番なのではあるが、そこに今風(?)元気少女の性格を持ってきて、定番話のように見えなくさせているところがポイントか。まあ、実際は定番なお話なんだけど。
 誰か自分を認めてくれ、という叫びを、自分の道は自分で見出すぜ、という決断へと転換していく、その主題は気持ちいい。でも、ラストはちょいとやりすぎでは……。まあいいか。少女マンガだもんな。
 相変わらず、ギャグっぼい掛け合いで油断させておいて、シリアスな展開に持ってくるあたりのセンスは抜群。あと、女の子の体描くの好きそうだなあ……って変な意味ではなく……いや、そういう意味か。この場合は、女ではなく女の子、であるところが重要なんだろう。このあたりが、少女マンガが少女マンガとして生き延びるための一つの鍵なのでは、などと妄想してしまう私であった。(1997.9.7)

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トテモ美シイ夏

 高田祐子
 集英社 1997.7.23
 ヤングユーコミックスコーラスシリーズ

(メモ)
 この前向きなのか後ろ向きなのかよー分からんところが実にいい。
 表題作は若くして死んだにーちゃんとの幸せな記憶と、にーちゃんに良く似た先輩との出会いってなお話。むしろいつまでも幸せな記憶とともに生きるにーちゃんの彼女の方が主か。その美しさを記憶したままで、前に進んで行く、というのが、続編の「トテモ愛オシイ秋」、という感じかな? 美しい記憶が積み重なっていく感覚が、心地よすぎて癖になる。
 他に短編二つ収録。その一つの「冬の神様」が泣ける。人と体を触れ合わせることで、自分の温かさを確認する……って文字で書くと何か陳腐になっちゃうな。ちぇっ。けれど、それを支えにして生きることもできる。そういう話。(1997.9.7)

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もうひとつの9月

 渡辺多恵子
 小学館 1997.8.20
 別コミフラワーコミックス・スペシャル

(メモ)
 思いっ切り明るい碇親子を見たければ、これを読めばいい……って全然冗談にならんな。そういうキャラクターデザインなんだからしょうがない。ほんと、好きなんだなあ。
 まあ、そういうお遊びは置いといて、表題作は渡辺多恵子の隠れた(?)得意技である○○○ネタ、って伏せとかないと完全ネタばれだよ、おい。まあ、途中でなんとなく分かるけどね。
 正直、この作品を読んで、久々に渡辺多恵子はいい!って思ってしまいましたよ。本当、明るい能天気バカに憧れてしまう屈折人間を嫌味でなく描ける人なんぞ他にゃいないよな。
 同時収録の「COMING OUT!」も、その主題のバリエーションといえばそうかな? 雑誌掲載時は、アイドルものの次はバンドっすか、という感じで軽く読み流してたけど、読み直してみたら、結構しっかりした作りの佳作でちょっと反省。
 最後の「キチキチ」は『きみとぼく』掲載作とのことで、ちょっと実験的で危ない雰囲気が珍しい感じ。こういう描き方もできるんだなあ。(1997.9.21)

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雪の桜の木の下で…

 柊あおい
 集英社 1997.7.30
 マッガレット コミックス

(メモ)
 柊あおいの『ぶ〜け』移籍(って言うのか?)後の最初のコミックス。シリーズになってる短編3作が収録されている。
 うーん、一応、『りぼん』ではできなかった大人の恋愛って奴をやろうとしているのは分からないでもないんだけど、子供が意地はってるだけにしか見えないのがちょいとつらい。特に現代篇の最初の2つがそう。
 最後の一つは他の2篇の登場人物の父親の話。柊あおいらしい、大甘のロマンチシズムが却って心地よくてグー。男の目からみた可愛い女の子ってのを上手く描きすぎという気もするけど……と、言いつつ、にやつきながら読んでしまう自分が悲しいよな。(1997.9.21)

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クローバー 1

 稚野鳥子
 集英社 1997.7.30
 マーガレット コミックス

(メモ)
 おおっ! オフィス・ラブ! レディコミか?
 と、思うとちょっと外される感じ。ちょいと甘めの展開においおいと思いつつも、まあこういう甘い展開もたまには良いか、と許してしまうのであった。それにしても、こりゃ意図的に毒を抑えているんだろーか。他の作品あんまし読んでないのでよー分からんな。
 女友達3人のそれぞれを主人公にした、オムニバス形式。軸になる最初の話の主人公が、14歳の時の恋をまだ引きずっている21歳、というのがミソか。「少女」マンガであることを生かしながら、もうちょい上の世代も読者も狙っていこうという作戦と見た。
 『天国の花』番外編「ストロベリー・タイム」を同時収録。って、私ゃ本編読んでないよ、どうしよう、と思ったら、比較的独立したサイドストーリーになっているので、読んでなくても結構楽しめるのであった。不器用な男の子がじたばたするとこがグー、って感じ。(1997.9.21)

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