1999年7月の読書日記


1999年7月20日

 7月12日、7月13日、7月14日。
 ブライアン・ウィルソンの東京公演に行ってきた。当然、三夜連続である。会場は東京国際フォーラム・ホールA。正直なところ、ちょっと会場としては大きすぎたかもしれない。やや空席もあったし。
 しかし、内容は素晴らしかった。
 最初に30分くらい(だったかな?)どこかで見たような伝記ビデオを見せられたのには驚いたけど、しかし、10年待った後の30分など、物の数ではない(でも最初に見たときはこのまま終わったらどうしようと本気で心配してしまったけど……)。14日には、ビデオが終わる直前に「俺たちは映画見にきたんじゃねーぞー」とか叫んでいる若者(かな?)がいたけど、会場に来ていた人たちの中には、60年代から待ち続けていた人だって、70年代から待ち続けていた人だっていたはずだ。30年間、20年間この日を待ち続けていた人に対して、たかだか30分で音を上げるとは、ちょっと失礼だったんでは、という気がしてしまった。まあ、でもそれは余計な話。
 12日の前半は、ちょっと声が出なくて苦しそう、という印象を受けたけど、でも、ブライアンがそこにいて、歌っている、というだけで、もう、ちょっとこりゃ感無量、って感じだった。その上、椅子に座ったままグルグル回転している! マイクもって踊りながら 歌っている! もう、何だか凄いぞっ! 私ゃ夢でも見とるのか? という感じ。とにかく、ブライアンがいる、という事実に圧倒されてしまった。
 13日は、もう少し余裕を持って見られた。ブライアンの声もますます良くなってきたし、バックの演奏とコーラスのうまさにもしびれる。ちゃんとブライアンの音になってるもんなあ。しかし、両隣に座った人が、両方とも、拍手も手拍子もせず、みじろぎもしないで聴いているので、なんだか妙に緊張してしまった。せめて、拍手はするべきだと思うんだけど……まあ、それだけ、音に集中していたってこと……なのかなあ?
 そして、最終日の14日。最初から最後まで、徹底したハイテンション。ブライアンも、バックのメンバーも、もうノリノリもいいとこである。多少の歌詞のトチリがどうした。これだ、これだよ、うん……ってもう説明不能。「キャロライン・ノー」とか、もう泣けてきてしまって……。ブライアンは、やっぱりブライアンだった。そのことを心の底から、感じることができた。よかった。自分が、ここにいることに、ブライアンが、そこにいることに、感謝。ただただ、感謝。
 帰りがけ、「ちょっとがっくりきちゃったなー、声も出てないし、歌も演奏もバックにまかせたって感じじゃん」とか若者(かな?)が語っているのが聞こえて、なるほど、そういう風にも聞こえるのか、とちょっと驚いた。萩原健太さんがご自分のホームページで、ビーチ・ボーイズやブライアンの曲を聴き込んできた人に対してでないと、このコンサートの良さを説明するのは難しい、というようなことを書いていたけど、なるほど、そうなのかもしれない。まあ、自分だって、たかだかブライアンの1stソロからのファンだから、あんまし偉そうなことはいえないんだけど。
 それでも、私にとって、この3日間は、やっぱり特別だった。人生が変わった、とまではいえないかもしれないけど、これから、ステージの様子や音を思い出す度に、思わず笑みを浮かべてしまったり、泣けてきてしまったりするんだろう。
 だから、日本公演の実現に関わった全ての関係者に感謝を。願わくは、ソフト化(CDでもビデオでも可)もしてほしいけれど……。いや、一番の願いは、もう一度、か。でも、それはちょっと欲張りすぎかな……。


1999年7月11日

 うーん、更新が止まっている……。
 神林長平『グッドラック 戦闘妖精雪風』(早川書房,1999)などを読んではいるのだが、感想が書けそで書けない……。
 何はともあわれ、加藤知子『天上の愛 地上の恋』(白泉社花とゆめCOMICS)の2巻から4巻まで、無事に出てめでたい限り。ちゃんと続きも出てくれることを祈るばかりだ。刊行にいたるまでの紆余曲折の限りはともかく、今時珍しい、真っ向勝負(?)の歴史ものってのが、なんとも嬉しい。相変わらずの屈折キャラオンパレードぶりと、コミックリリーフのタイミングのうまさを堪能。こういう作品を描く場(雑誌)がないとは……。
 一部の例外を除いて、80年代に活躍した作家を読むのは80年代に読んでいた人だけ、って形になっていくとすれば、寂しい限り。時代を超える作品なんてそうはない、といってしまえばそれまでだけど、読者の側にも、もちっと同時代性だけにこだわらない読み方をする層が出てきてもいいような気もする。そのためには、同時代性と歴史性と、両方を踏まえた上でのマンガ評が必要なのだろう……と思うんだけど、そう思うんなら自分でやってみろといわれると……うーん。

 昨日は、さいたま文学館に、「塙保己一と『群書類従』」展を見に行ってきた。展示自体は(予想通り)小さいものだったけど、保己一の伝記を集めたコーナーが充実していて面白かった。図録も(学術的な資料としてどうこういうものではないが)結構わかりやすくてなかなかよい。
 しかし、遠いぞ……。埼玉の交通の便の悪さをなんだか実感。

 そんなこんなで(?)明日から3日間、ついに、ついにブライアン・ウィルソンのコンサートである。生で歌うブライアンをこの目で見られる時がついに……。心は遠足前の小学生状態。ちょっともう正気ではいられない。こんなんで明日仕事になるのか?


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