1999年3月の読書日記


1999年3月28日

 読みたくてたまらないのになかなか手を付けられない本があった。
 ついつい、逃避してしまい、学会誌をぱらぱら見てみたり、ラショウ『巨人のイタチョコの星のシステム』(毎日コミュニケーションズ,1999)をゲラゲラ笑いながら読んでいたりしたが(それにしても、このヘナチョコさは凄いとしか言い様がない。こういうのが出てくるからMacユーザーをやめられないんだよなあ……)、さすがに人から借りている本なので、いつまでも積んでおくわけにもいかない。
 と、いうわけで、現在、小野不由美『屍鬼』(新潮社,1998)を読んでる最中だったりする。
 しかしこの本は体に悪い。何かがじわじわと迫りくるこの緊張感。体力と精神力を消耗することこの上ない。それなのに、読むのを中断する時の苦痛ときたら! これはもう麻薬状態である。上巻の後半でこれでは、下巻に入ったらどうなってしまうやら。まともな人間生活を送れるかなあ……。ううう。だから読み始めるのが怖かったんだ……でも、もう引き返せない……。
 次週は読み終わっているに違いないので(というかこんな状態で1週間以上も保たんわ)、感想書けたら書くかも。燃え尽きてないといいけど……。


1999年3月22日

 ようやく、神林長平《新・雪風シリーズ》の最終話を読んだ。
 ラストで思わず魂が震えてしまう。
 良く考えると、このラストで魂に来ちゃうのって、自分って奴ぁ人間としては駄目駄目なのでは、という気もするが、何かもう、こりゃ駄目でもいいや、という感じである。そういう意味では、分からない人は分からないことの幸せを噛みしめるべき作品なのかも……うーん。何はともあれ一冊にまとまるのが楽しみ(もうすぐかな?)。6年以上も前に読んだ話なんて忘れちゃったし。
 しかし、今ごろ『SFマガジン』2月号を読んでる私って一体……。もうすぐ5月号出ちゃうよ……。


1999年3月21日

 うーむ、書こうにも読み終わった本がない……ので、最近(というか昨日なんだけど)買ったマンガの感想などを書いてお茶を濁すのであった。
 とりあえず、ふくやまけいこ『髪切虫』(メディアワークスDengeki Comics DX)が出たのは嬉しい。でも、表題作も、同時収録の「桜」も、今一つ消化不足という感じが。長編のプロトタイプに見えてしまうんだよね(もしかすると本当にそうなのかもしれないけど)。個人的には昔の切れのいい短編の復活を期待したいところ。どうせやるなら、もちっとダークでもいいのでは?
 ダークといえば、奥瀬サキ『フラワーズ』(スコラSCHOLAR SC DELUXE)の1巻も出た。80年代は遠くになりにけり……。『低俗霊狩り』には戻らない(戻れない?)のだなあ。もうエンターテイメントをやることには興味がない? というより、今、物語を語ろうとするとこうなってしまう、ということなのか。
 というわけで、桑田乃梨子『一陽来福』(白泉社花とゆめCOMICS)に安らぎを求めてしまうのであった(ちなみにタイトルは誤字ではない。念のため)。アタックする度に振られ続けて、それでもなおいい友人をやってしまう脇役の少年が、他人事でなし度が高くてもう最高。ほんと、桑田乃梨子って、報われない男を描かせたら天下一品だなあ。

 蛇足だけど、以前紹介した書評ホームページを主催しているひつじ書房の房主(って書いてある……)、松本功氏のインタビューがホット・ワイアードに掲載されている、というのを人から教えてもらった(今は書評ホームページからもリンクが張られている)。固定化した著作物の流通形態に風穴を開けてやろう、という意欲が気持ちよい。『本とコンピュータ』とか読んじゃう人は必読。


1999年3月14日

 XTCの"Apple Venus volume 1"にはまる日々……。

DO WHAT YOU WILL BUT HARM NONE


クラフト・エヴィング商會『クラウド・コレクター 雲をつかむような話』(筑摩書房,1998)

 架空の世界の架空の旅の記録を読み解いていく物語。
 倉庫から出てきた古い手帳、21本の謎の酒、手帳に書かれた不思議な世界「アゾット」……。「実物」の写真やイラスト、そしてそれにまつわる奇妙な物語とが、何ともいえない味わいを醸し出す。夜の世界に入ればページが黒くなったりする凝った造本も楽しい。
 もちろん、その旅は嘘の旅で、ここに描かれている世界も嘘の世界なのだけれど、あまりにももっともらしく嘘が重ねられていて、にも関わらずあまりにも正直にこれは嘘であると告白されてしまっているので、実は嘘であることが嘘なんじゃないか、という気がしてしまう。そんな本だ。
 ちなみに私が好きなのは、哲学的サーカス団の解釈芸のエピソード(熊でさえ眉間に皺を寄せているってのがいい)。それぞれの奏者がまったく異なる離れた場所で同時に一つの交響曲を演奏するのだけれど、その曲の全体を聞くことができる者はどこにもいない……ただ、「世界」そのものを除いて。というかなでるものたちのエピソードも、どこかもの悲しくて、忘れられない。
 同時期にから出た『すぐそこの遠い場所 THE DICTIONARY OF AZOTH』(晶文社,1998)は、姉妹編。こちらは架空の世界の様々な事象を集めた事典である。本書と響き合うように作られているので、両方を併せて味わうことを強くお勧めする。


1999年3月7日

 PowerMac G3/300 (Blue & White)を買ってしまい、環境の移行で手いっぱい……。でも一週間はHDのパーティション切り直したりしない方がいいとかいうし(返品がきかなくなるらしい)、本格的に移行するのは来週だなあ。それにしても、速いぞ。まあ、今までCentris650使ってたんだから速く感じるのは当たり前か。Rboard Pro for Macも同時に購入。キーの位置が今までと違うので何となくまだ慣れないのであった。でも、確かにキータッチはいいなあ、これ。やっぱり、キーボードは親指シフトだよね……って、そりゃ私だけか。

 現在、頼まれ原稿を書くためにKurt Wettengl(ed.) "Maria Sibylla Merian: 1647-1717, artist and naturalist" (Verlag Gerd Hatje, 1998)の巻頭の論文(概説みたいなもの)を必死で読んでいる最中。ドイツ語からの英訳なのだけれど(元々は展示会の図録)、英語読むの久しぶりだから疲れる。しかし、電子辞書の威力は絶大だと実感。EPwing版のリーダーズを使っているのだけれど、こいつのおかげで何とかかんとか読めている、って感じである。え? メーリアンって誰? それが書けるなら、英語の論文なんて読む必要ないって……。
 というわけで、今週の更新はこれだけ。


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